旅行記

2025.03.24

日本最長、ならぬ本州第二位の長距離路線バス

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スタッフ名:川勝

本州二番目に長い路線バスは紀伊半島を走る松阪熊野線

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日本最長の路線パス(高速道路を経由するバスを除く)として有名なのが大和八木駅(奈良県)と新宮駅(和歌山県)を結ぶバスで、運行されている奈良交通さんのHPによると距離数で169.9キロ、停留所の数は168に及ぶそうです。 そして、ここ紀伊半島には本州で二番目に長いとされるバスも走っているんです。 松阪市と熊野市を結ぶ三重交通さんの「松阪熊野線」がそれで、135.8キロの区間を4時間半ほどかけて結びます。 
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しかし、残念なことに、この路線は2025年3月末をもって廃止されることが決まっています。
今回は、廃止前に当該路線に乗車する機会を得ましたのでその様子をご紹介します。 廃止目前のご紹介とはなりますが、この先をお読みいただく皆様にはこのことをご了承のうえお進みください。

この「松阪熊野線」の廃止は既に昨年の早い段階で発表されており、それまでは一日3往復設定されていたダイヤが2024年10月以降は一日1往復のみ、しかも平日だけの運行に減便されています。 そしてこの残った一往復の運行も今年3月31日をもって終了となります。 
これがバスの時刻表!
総距離135.8キロの区間に設置された停留所は122にも及び、所要時間は松阪方面行きが4時間27分、熊野市方面(三交南紀)行きが4時間17分かかります。 長時間ゆえ、往復ともに2箇所の停留所において各15分の休憩が設定されているのも特徴です。 以下のボタンをクリックすると三重交通さんのPDFファイルが開きます。 

松阪熊野線のバス時刻はコチラ

今回は上り(松阪方面行き)のバスに乗車
3往復時代は時間選択の余地があったのですが、現在は1往復のみ、しかも「最長」にこだわると上り便の方が6停留所分長い(松阪駅前~松阪中央病院間を走行)ので、必然的にこの松阪中央病院行きの上り便一択となります。 
始発の三交南紀停留所に向かう途中の七里御浜から望む朝日。休みの日にこんな早起きをするのは久しぶりです。
お目当てのバスは既に車庫でスタンバイ
始発停留所の「三交南紀」はJR熊野市駅のある市の中心部から少し離れたところにある三重交通さんの営業所。 まだ朝早いのでたくさんのバスたちが並んでいます。 敷地内にはバス利用者用に40台ほど止められる駐車場があるので、名古屋行きの高速バスや東京行きの夜行バスに乗るのにも便利です。
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乗車予定のバスが車庫でスタンバイしています。(写真中央) 
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拡大。 右側の「松阪中央病院」と書かれているのがそれです。
前には「ありがとう熊野古道ライン」の飾りが取り付けられ、廃止が近いことを物語っています。
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乗り場にバスがやってきました。 数名の乗車がありましたが、皆さん廃止前の乗車が目的のようです。
車内設備
見た目は普通のバスですが、長距離を走る特別仕様車のようで、一部座席を除き背もたれが高く充電用のUSB端子やドリンクホルダーも付いており、また、ドリンクホルダーはスマホのホルダーにもなってとても便利でした。 さらにWi-Fiも備わっていて、座席間隔が狭いことを除けば至れり尽くせりです。
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車内の様子。
松阪に向けて4時間半のバス旅のはじまり
さて、バスは数名の乗客を乗せて定刻の7時36分に松阪に向けて発車しました。7分後にはJR熊野市駅に停車、ここで数名が乗車されました。実質的にはここが始発停留所で三交南紀~熊野市駅間は回送のついでに乗客を乗せているといった感じでした。
熊野市駅前から数分走ると大泊停留所に止まります。愛知・三重方面からの自動車道はここ大泊ICまで延びているのですが、このバスは自動車道には入らず忠実に下道を進みます。
出発から1時間ほどで1回目の休憩地、海山バスセンターへ
いくつかの峠を登ったり、下りたりしながら8時55分ピタリと定刻に海山バスセンターに着きました。ここで1回目の休憩(15分間)です。乗車時「1」だった整理券番号はここで既に「29」まできています。
バスセンターには待合室と清潔なトイレのほか自動販売機もあります。海あり、山ありの当地ですが「海山」は「みやま」と読みます。
 
海山バスセンターではわざわざ(?)広い駐車場の真ん中にバスを停めてくれていて、乗客の皆さんはその姿を写真に収められていました。最後の雄姿(?)をご覧ください。(側面の写真は逆光だったため後述の道の駅奥伊勢おおだいでの写真です)
バスは海山から伊勢路へ
15分の休憩を終えたバスは定刻の9時10分に海山バスセンターを出発しました。観光バスではないので、点呼や「お隣さんはいらっしゃいますか?」などのアナウンスはありませんが、きっと運転手さんは乗車人員を把握されているのでしょう。
車窓には小さな漁港が見えたと思ったら、ひとつ峠を越えてまた漁港が見えて…と地形に忠実に進んでいきます。
海あり。
山あり。

自動車道経由ではひたすらトンネルを突き進むのでこのような景色は味わえないです。
途中、「大内山」という停留所に停まりましたが、ここは「大内山牛乳」で知られる地域です。この牛乳は三重県を含む紀南エリアでよく知られており、休暇村の朝食ビュッフェでもお出ししています。(写真はイメージ)
道の駅で2回目の休憩
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何度か峠を登り下りして辺りが少しにぎやかになってくるとバスは「道の駅奥伊勢おおだい」に定刻の10時21分に着きました。ここで15分の休憩となります。ここは先の休憩地とは異なり随分賑やかで土産品や飲食物の購入も可能です。産直所では最近高騰している白菜やネギなどの葉物が安く販売されていたのですが、車内に持ち込むと何かと迷惑になりそうなので買うのを諦めました。
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ここまでの料金は、整理券番号が「1」なので2,700円を示しています。
2度目の休憩の後は松阪に向けてラストスパート
バスは定刻の10時36分に最後の休憩地である「道の駅奥伊勢おおだい」を出発しました。しばらく進むと国道からそれて高台にある観光地に向かいますが、ここは「VISON」(ヴィソン)という観光施設でバス停の名称も同じ横文字表記です。 
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VISONは「食」をテーマとした施設で、各地の有名食材や土産品を売る店舗が並んでいるほか、飲食店や宿泊施設も備わっています。ここでの休憩はありませんが、大きなキャリーバックを持った観光客が何人か乗車されてきました。これより先は工業団地や新興住宅地などを進んで行き、途中停留所でも乗降されてきました。そして松阪市街地に入ると乗降客も増え、定刻の11時48分に松阪駅に着きました。ここでほとんどの方が下車されました。引続き乗車しているのは始発からの乗車目的の方と、松阪駅から乗られた病院に向かう方々だけとなりました。

そしてさらに進むとついに「次は、松阪中央病院」と終点を告げるアナウンスが!
料金表示器には券番号「1」のところに「2700」と示されています。先ほどの「道の駅おおだい」までも2,700円、そこから1時間半ほども走ったのに同じ料金とは何とも良心的な設定ですね。
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ちなみに整理券番号は最終的には「92」まで増えていました!
二画面でも表示しきれていないのがすごいです!!
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終着の松阪中央病院が見えてきました!最後の自動アナウンスでは「ありがとうございました、ありがとうございました」と二度続けて言っていたのが印象的で、遠路はるばる乗ってきたことが報われました。
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そして、定刻の12時03分、終点の松阪中央病院に着きました。距離数135キロ、乗車時間4時間27分の長旅でした。運転手さん、お疲れ様でした!
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バスは一旦松阪駅まで回送の後、松阪駅14時15分発の下り熊野市(三交南紀)行きの便として帰っていきました。「バス運転士になりませんか」の表記が微笑ましい反面、荷客運送業界が抱える問題を切実に伝えているようでもあります。
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終点の松阪中央病院はJAさんのとても大きな総合病院でした。
早速、帰路へ
松阪中央病院から松阪駅まで向かう次のバスは1時間弱待たないといけないので歩いて向かうことにしました。経路上に松阪城跡があるので何の前知識もなく立ち寄ってみました。
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結構立派な城壁です。
松阪市街を一望できます。
今年は寒かったせいか、城内の梅がこれから見頃を迎えようとしていました。
城下の石畳に咲くしだれ梅はちょうど見頃を迎えていました。平日の昼時で観光客の姿もほとんどなくゆっくりと堪能できました。
歩くこと45分、JR松阪駅に着きました。バスを待っていても時間はさほど変わらなかったのですが、景色や花をゆっくりと楽しめてよかったです。
【番外編】松阪から熊野市へ
さて、特段松阪での用事は無く、帰りは先述の松阪駅14時15分発の熊野市(三交南紀)行きバスで戻る方法もあったのですが、1分後の14時16分に出るJRの特急「南紀5号」に乗った方が2時間ほど早く着くのでこれで戻ることにしました。
ホームに南紀5号がやってきました。
松阪駅を出た南紀はさすがは特急、快調に各駅を通過していきます。車窓からは時折、先ほど苦労して進んできた国道が顔を出します。順調に進むと16時過ぎには熊野市に着く予定だったのですが…
ここでアクシデントが!
途中の尾鷲までは順調に進んでいたのですが、「先行列車が障害物と接触」とのアナウンスが入りしばらく尾鷲駅に停車、その後「落石と接触」とのことで運転を見合わせるとのアナウンスが…
結局、1時間以上経っても列車は動かず運行再開の見通しも立っていないため、ここで旅行を中断することとして駅の窓口で前途の払い戻しを受けました。
先ほどのバスに再会!?
さて、ここで列車を降りたのは、先ほどご紹介した14時15分に松阪を出た路線バスが後を追ってきているためで、バス時刻表(上のPDFファイル)によると「イオン前(尾鷲)」の通過予定時刻は17時18分となっています。

もう一度PDF時刻表を見る

駅から歩くこと5分、「イオン前」バス停に出ました。そして待つこと数分、朝乗ったバスの折り返し便がここでもきちんと定刻でやってきました。
それにしても、先ほど松阪中央病院で降りた客がこんな所から乗ってきたら運転手さんはさぞかし不思議に、いや、不審に思われたことでしょう。
 
ちなみに、イオン前を出て少し先の「熊野古道センター」にはこの下り便しか立ち寄らないため、厳密に「完全乗車」しようとするにはこの下り便にも乗る必要がありそうですが、思わぬアクシデントでここに来ることもできました。
 
そして、「イオン前」からバスに揺られること1時間14分、定刻の18時32分に今日の出発地でもある「三交南紀」に無事に着きました。
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辺りは既に薄暗く、数人の乗客を降ろしたバスは、車庫の外れにある給油所に向かっていきました。往復270キロの旅、本当にお疲れ様です。
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気になる松阪熊野線の廃止後は?
昨年10月には廃止前提ともいえる減便(3往復→1往復、土休日運休)が行われていましたが、今年3月末の廃止以降はどうなるのでしょうか。ニュースなどの情報によると、比較的利用のある松阪市内~道の駅奥伊勢おおだい間は残るようですが、利用の少ない区間はその停留所も含めて廃止となるようです。
残念ではありますが、人口減少等により利用が無いのであればやむを得ないのでしょうか。
さて、ここまでお読みいただいた皆様、ありがとうございました。
距離数で日本一には及ばないものの、本州では第二位となる135キロ、時間にして約4時間半のバス旅は結構乗り応えがありました(しかも想定外のプラス1時間14分の帰路乗車も)。実際に乗ってみて何よりも驚いたのがその距離もさることながら、全ての停留所において時間に忠実に走っていることでした。鉄道とは異なり他の車両や信号機のある公道を、しかも100を超える停留所において定時に走り通す技術はさすがだなと感じました。
この旅行記が、あと残すところ数日ですがこれから乗車される方の参考に、また、廃止後には「こんな路線もあったんだな」と当時を振り返っていただければ幸いです。

三重交通さんのHPはコチラ

三交南紀(熊野市)の場所
松阪中央病院の場所
紀南エリアでのご宿泊は

休暇村南紀勝浦

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