癒しと再生の 最強パワースポットへ
古来、幸せを願い、日本人が参詣してきた熊野三山。
時代が令和となった今年、“熊野古道”は世界遺産登録15周年にあたり、 ぜひともこの聖地を訪れてみたい。
旅のベースは、熊野那智大社に近い休暇村南紀勝浦に。 自然に満ちた参詣道を歩いて癒され、神代からのパワースポットで手を合わせれば心もリセットされ、新しい時代を歩む力が湧いてくるはず。
熊野三山を目指すいにしえの巡礼の道
紀伊半島の南部・熊野には、京都 ・ 大阪方面から、 熊野三山へ至る参詣道が延びている。これらの道を熊野古道という。聖地・熊野の成り立ちと、熊野古道の概要をまず頭に入れよう。
前世から来世まで救いの力で信仰を呼ぶ
日本は万物に神を見出してきた国。深い森を抱く紀伊山地や、那智大滝が息づく熊野では、このパワフルな自然の中に神が見出された。そして、熊野の三社がそれぞれに誕生する。奈良時代には、神道と外来の仏教の融合(神仏習合)が進み、熊野の三社の主祭神も仏の名を持つように。たとえば熊野本宮大社の家都美御子大神は、 浄土にいる阿弥陀如来となり、来世を救うとされた。こうして熊野の三社に詣でれば、前世と現世、来世も御救いいただけると考えられ、浄土信仰の高まりもあって、皇族や貴族の熊野詣でがさかんに。熊野古道がつながり、やがて庶民にも熊野詣でが広まった。
世界遺産となって推進される環境保護
時を経て、明治時代には、全国で神社の合祀が進められる。併合された後の神社林は伐採されることもあり、熊野でも鎮守の森が失われ、生態系がこわれる危機に。 和歌山県出身の博物学者・南方熊楠らが反対し、幸いにも完全消失は避けられた 。 那智原生林などの原始的な自然が残り、熊野三山や熊野古道などが2004年、「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として世界遺産に登録。国内外の多くの人が訪れる一方で、環境を保つ活動も実施され、聖地は大切に守られ続けている。
たっぷり寄り道しながら中辺路を歩く
和める風物に出合いつつ最初の聖地、本宮へ
熊野三山を結ぶ中辺路は見どころも豊富で、そのひとつが道沿いに点在する「王子(おうじ)」だ。熊野の神の御子神を祀った社で、旅の安全祈願やみそぎをしたり、ひと休みする場だった。旅程に合わせて立ち寄る王子をチョイスし、熊野の自然を感じながらゆっくり歩くのがおすすめ。
中辺路の始まりに近い場所にある「滝尻王子」は上皇による歌会も行われた場所で、風格が漂う。ここから「不寝王子」までは、急峻な山道を登る。いにしえには、難所もある熊野古道を進む辛苦に御利益も比例するとされたが、先人の苦労 が身にしみるようだ。
山道を行く中で和ませてくれるのが、愛らしい牛馬童子像。 また、渇きを癒す「野中の清水」も旅人を喜ばせたに違いない。この近くの「継桜王子」の石段 付近には、「野中の一方杉」がそびえる。枝がすべて熊野那智大社がたたずむ 南を向くことから名付けられた。
熊野本宮大社の聖域の入口とされるのが「発心門王子」だ。聖地にさらに近づいた「ちょっとよりみち展望台」では、壮大な山並みを背に大斎原の大鳥居を望める。そしてたどり着く熊野本宮大社は、檜皮葺で歳月を経た木造の社殿が横一列に並び、荘厳な雰囲気。旧社地の大斎原を訪れると、木々に囲まれ、広々として静かだ。はるか昔、山道を歩き続け、ついに聖地に立った先人たちの感動がおのずとしのばれる 。
大いなる自然に熊野信仰の始まりを実感
次なる神域、熊野那智大社では石畳の大門坂を登っていく。朱塗りの社殿は、山の深い緑を彩るよう。隣接する那智山青岸渡寺の敷地内から望む三重塔と那智大滝は、一幅の絵の美しさだ。那智大滝は飛瀧神社内の「お滝拝所舞台」で間近に目にできる。„舞台“では高さ133mの滝の音も豪快で、流れ落ちる水のエネルギーを、思い切り身に浴びる気がする。
熊野川の河口に近い熊野速玉大社は、熊野那智大社から約20 ㎞の距離。近くの神倉神社ではゴトビキ岩の巨大さに見入ってしまう。並外れたパワーを感じさせる滝や岩を、人はどんなに畏れ、崇めたことか。そんな自然への畏敬の念から、聖地・熊野が始まったことがうなずけて感慨深い 。
熊野詣でのあとは熊野灘を見晴らす絶景の湯で癒しタイム
休暇村南紀勝浦
湯船から見る大海原の日の出にリピーター続出
熊野は、多くの温泉があるのも魅力。泉質も多彩だが、休暇村南紀勝浦の泉質は、ナトリウム塩化物泉。無色透明で匂いもなく、誰でも入りやすい。もちろん自家源泉だ。
温泉大浴場「めざめの湯」は、4種類の湯船すべてから海が見える。開放的な眺めに、熊野詣での疲れも消えてしまう。「めざめの湯」という名は、熊野灘に昇る、美しい朝日を望めることから来ている。露天の湯で波の音をBGMに、日の出を愛でるリピーターも多い。また、夜は1人用の陶器風呂に入って星空を見上げれば、自分の世界に浸れると評判だ。熊野詣ででは、熊野本宮大社に参詣する前に、温泉で心身を清める湯垢離を行ったことも知られている。 参詣に出かける日の朝の湯浴みも、熊野流でおすすめだ 。
■露天の岩風呂
まさに崖の中腹にあるような野趣あふれる露天風呂。緑と海のほかには視界をさえぎるものもない。空を舞うトンビを間近で目にすることも。
※1枚目…男湯
2枚目…女湯
・写真1枚目
■内湯
海を目に心安らぎ、湯浴みが極上の癒しに。湯温は41~42℃に保たれ、陶器風呂はこれより少し低い“ぬる湯”。
・写真2枚目
■絹肌の湯
微細な気泡で全身をマッサージする「絹肌の湯」は、眺望も抜群で、日の出が見れることも。
・写真3枚目
■掛け流し陶器風呂
掛け流しのお1人様用の「陶器風呂」は熊野灘を見晴らす眺望が自慢。
海と空が近い!展望テラス
ロビーから海側の通路に出ると、アプローチの先に展望テラスが広がる。雄大な熊野灘のパノラマを目にすれば、気分爽快。ここから見る初日の出も人気で、今年の元旦にも大勢のお客様が詰めかけた。晴天の夜は星空を楽しめる。那智勝浦は生マグロの水揚げ拠点としても有名で、“まぐろのぼり”がテラスで元気に、風に泳ぐのも微笑ましい(初夏限定、雨天はお休み)。