奥州市(おうしゅうし)は岩手県の内陸南部に位置し、「平成の大合併」により水沢市、江刺市、前沢町、胆沢町、衣川村の5市町村が合併してできた市です。歴史やグルメなどそれぞれの地域に興味深い観光資源を持ち、何よりメジャーリーグで大活躍する大谷翔平さんを育てた町でもあります。
頼朝と義経と朝廷と奥州藤原氏
平氏、源氏に比べて知っている人は少ないかもしれませんが、奥州藤原氏とは平安時代の末期に藤原清衡、基衡、秀衡、泰衡の4代にわたって繁栄した東北地方の豪族です。
奥州市江刺は、初代清衡公とその父・経清公が住んだ土地で、1993年、この奥州藤原氏の興亡を題材にした大河ドラマ「炎立つ」の撮影を機に「えさし藤原の郷」というテーマパークが整備されました。約20haの敷地内には、寝殿造を再現した平安貴族の住宅や、武家館など大小120棟もの建物が建てられ、時代衣装の着付や弓矢など様々な体験が楽しめます。
えさし藤原の郷
NHK大河ドラマ「炎立つ」から「鎌倉殿の13人」へ
藤原清衡公は前九年の役の戦乱中に生まれました。後三年の役を源義家と協力して勝ち抜き、陸奥国平泉に政庁を開き、本拠地を江刺から平泉に移しました。清衡公は戦の無い平和な世の中をつくることを望み、たび重なる戦により命を落とした全ての霊を慰めるために「中尊寺」を建立しました。
平氏との戦いが終わるころ、頼朝と義経は次第に対立するようになります。それを朝廷に利用されたこともあり、義経は藤原氏を頼って東北に逃げます。3代秀衡公は、源平の争乱にも中立を保ち源義経を保護しました。
平泉と鎌倉は義経をめぐって冷戦状態でした。3代秀衡公の死後、4代泰衡公は頼朝の圧力に屈して義経を自刃に追い込みますが頼朝には許されず、その後攻められて滅ぼされました。
因みに、2022年1月から放送予定の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では、奥州藤原氏の最盛期を築いた藤原秀衡公役を田中泯さんが、源義経役を菅田将暉さんが演ずることになりました!
2代基衡公、3代秀衡公の時代に多くの伽藍が造営された毛越寺(もうつうじ)。左から 毛越寺本堂 毛越寺浄土庭園 高館からの眺望
2011年、平泉はユネスコの世界文化遺産に登録されました。中尊寺の金色堂には、中尊寺を造営した初代清衡公、毛越寺を造営した二代基衡公、源義経を奥州に招きいれた三代秀衡公、四代泰衡公の亡骸が金色の棺に納められ、孔雀のあしらわれた須弥壇のなかに安置されてします。
一般社団法人 平泉観光協会
活躍が凄すぎる「オオタニサン!」
そして、奥州市は日本球界を飛び越え本場アメリカのメジャーリーグで活躍する大谷翔平さんの出身地です。
2018年に「大谷翔平選手ふるさと応援団」を結成。地元企業の協力も含め、町全体で応援を続けています。現在は180人以上の団員がいるそうで、背番号にちなんで毎月17日を「大谷翔平選手応援デー」として、市の職員だけでなく、銀行や公益事業会社、電力会社などの社員もエンゼルスの赤いユニフォームTシャツを着て業務を行っています。最近では、一般市民も着用して歩いているそうです。
奥州市の田園地帯にある田んぼを利用した「田んぼキャンパス」にも、大谷翔平選手の「田んぼアート」が出現(写真は2019年8月)。毎年一般公開されていましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、残念ながら昨年に引き続き、今年も中止とのことです。来年はきっと!
大谷翔平選手ふるさと応援団
奥州市観光物産協会
あれも、これも奥州市!
肉の芸術品「前沢牛」
奥州市は「前沢牛」の産地としても知られています。肉の芸術品とも例えられる極上の肉質は、柔らかくほんのり甘味があり、霜降りの脂にはしつこさがないので握り寿司がおすすめです。下の上でサラッととろける美味しさがたまりません。きっとオオタニサンもたくさん食べて育ったはずです!
全国唯一の「牛の博物館」
また、地元の人々がとても牛を大切にしている文化的土壌の証として、全国唯一の「牛の博物館」があります。8千年前の“ウシと人類とのであい”から家畜化に至るまでのウシの功績に感謝するべく、私たちの知らないウシの世界について生物学と人文科学の両面から紹介しています。10月24日までは、「大地に生きるウシ~究極の反芻獣~」という面白そうな企画展も開催中です。
牛の博物館
ウシの次はウマも活躍!
奥州市には、正面に北上川、右に義経伝説の束稲山(たばしねやま)、左に早池峰山(はやちねさん)を眺望できる美しい「水沢競馬場」があります。大型モニターがなくても全景が見渡せ、昭和感が心地好い競馬場です。12月31日には桐花賞 OP(岩手版有馬記念!)という、明るいお正月を迎えるための勝負の舞台が用意されています。おすすめの競馬場グルメは場内にある「水沢食堂」「丸大食堂」の「ホルモン(もつ煮込み)」。寒い日には、赤ペンを持つ手も温まります。
現在、11月28日からの開催に向けてパドックを改修中とのこと(広報担当者)。安心してください!パドックの中央に描かれたキャラクターのハヤテ君は残りますよ。
一周1200mのダートコースを持っています。ハードでタフな雪の日のレースもあります。水沢競馬場では手書きの出走馬確定板が健在(写真提供:岩手競馬組合)
岩手競馬
奥州藤原氏の黄金文化を支えた町
モンスターゴールドを採掘!
奥州市から太平洋に向かって車で約1時間ほどの町気仙沼市。平泉・中尊寺金色堂の装飾など奥州藤原氏の黄金文化を支えたといわれる「鹿折金山」があります。1971年に閉山されましたが、1904年(明治37年)には2.25kg、金の含有量83%という「モンスターゴールド」が採掘された記録も残っています。2019年には「黄金の国ジパング、産金はじまりの地をたどる~みちのくGOLD浪漫~」として日本遺産に登録されました。毎年5月中旬にツツジが山を朱色に染める田束山(たつがねさん)には、平泉の理想郷の具現を支えた奥州藤原氏ゆかりの寺院跡や経塚群が残っています。
お問い合わせ:鹿折金山資料館 tel 0226-29-5008
秋の味覚が揃い踏み
今、気仙沼漁港には、太平洋を南下して脂が乗った「戻りカツオ」が連日水揚げされています。10月中下旬には三陸沖でもサンマが獲れだすとの漁況予報も。また、赤土と赤松の林が多い気仙沼大島では、松茸も採れます。秋の味覚のゴールドラッシュやー。
さて、奥州市への旅、いかがでしたでしょうか。ぜひ自分だけの「ゴールドマップ」を作りにお出かけください。
奥州市の旅に便利な休暇村気仙沼大島