7月7日は年に一度のデートの日
織姫星と彦星が、天の川を渡って年に1度だけ会うことができるという、星にまつわる物語の中でも特に有名な七夕ストーリー。中国から物語が伝わったと云われる奈良時代の7月7日は太陰太陽暦(旧暦)。現在、国立天文台では太陰太陽暦のかわり「伝統的七夕」という言葉を使い、旧暦とは別の方法で七夕の日を求めています。2021年は直前の新月が8月8日(太陰太陽暦だとこの日が7月1日)なので、7日目の8月14日を伝統的七夕の日としています。夜10時を過ぎれば月も沈み、夜空が十分に暗くなれば、頭上近くに織姫星と彦星を探すことができるでしょう。
(2021年8月14日 22:00頃の天頂 ステラナビゲータVer.11で作成)
織姫星と彦星の超遠距離恋愛について
さて、1年に1度のデートという織姫星と彦星の超遠距離恋愛に、「ないわー」と思う方も多いでしょう。織姫星と彦星の間は14.4光年。光のスピードでも約14年半かかってしまい、1年に1度会うことも無理な距離です。ところが、織姫星も彦星もまだ若い星で、天文学的には数億歳。どちらの星も10億年程度は生きるとして、百歳まで生きる人間の寿命に換算してみると、その頻度はなんと3秒に1度。「ほとんど一緒にいるのと同じです!」と面白く解説してくださる天文学者もおられます。そう考えれば、織姫星と彦星の恋愛は心配にあらずです。
(画像提供:国立天文台)
七夕まつりと言えば
さて、七夕と言えば仙台の「七夕まつり」が有名です。仙台藩祖・伊達政宗公が、婦女子の文化向上を奨励するために始めたのが起源で、毎年8月6日から8日は、仙台駅前から中央通り、一番町通りのアーケードにかけて、くす玉を付けた5本ずつの「吹き流し」や縁起物の「七つ飾り」など、仙台ならではの豪華絢爛な飾りが見られます。地域ごとの商店街でも、子供たちが作った昔ながらの素朴な七夕飾りがみられ、仙台中が賑わいます。
(画像提供:仙台市観光課)
※2021年の開催は7月上旬に可否を正式決定する予定です(仙台七夕まつり協賛会)
幽玄な瑞鳳殿七夕ナイト
また、伊達政宗公の霊廟「瑞鳳殿」でも七夕まつりの期間に合わせ、参道や境内に竹灯篭を灯し、本殿のライトアップや森のコンサートなど、幻想的な「瑞鳳殿七夕ナイト」が開催されます。残念ながら2021年は開催が見送られることとなりましたが、来年はその復活を楽しみにしたいと思います。 (写真提供:青葉城址伊達政宗騎馬像 仙台市観光課 / 涅槃門(七夕) 公財 瑞鳳殿)
セン!ダイ!レッツゴー!
ちなみに仙台市には、仙台をホームタウンとするJリーグのクラブ「ベガルタ仙台」が活躍しており大いに盛り上がっています。チーム名「ベガルタ」の由来は、仙台の「七夕」にちなんで、天の川を挟んで光輝く織姫星ベガと彦星アルタイルの伝説から名付けられました。さぁ、輝きを放て!ベガルタぁぁぁぁぁ!
(画像提供:©VEGALTA SENDAI )
天の川を見るなら「夏」がおすすめ
近年NASAやVERAプロジェクトの観測によって銀河の動きを正確に捉えつつあります。天の川銀河系は、銀河中心をはさんで対称形の美しい渦巻きを持ち、毎秒240キロもの猛スピードで回転していることも明らかになっているようです。太陽系は銀河系の中心から外れた位置にあり、光の帯のように見える天の川は遠くの星たちで、私たちの住む「銀河」を内側から見た姿です。
地球は1年をかけて太陽を公転し、夏は天の川銀河の中心を見ている位置にあるため明るく、冬は端を見ている位置にあるため薄く見えます。
(画像提供:国立天文台)
天の川の探し方
太陽や月、星座が空を移動するように、天の川も時間の経過とともに、少しず
つ位置を変えていきます。8月は、天の川が南の空で縦方向に立って見えるので、天の川を見る絶好の季節です。南の空から頭の真上近くの夏の大三角を通り、北の空のカシオペヤ座まで続いています。
まず、はくちょう座の比較的明るい星で結ばれる北十字星(ノーザンクロス)を見つけましょう。はくちょう座を見つけたら、はくちょう座の左手側にあるのが織姫星(ベガ)、右手側にあるのが彦星(アルタイル)と探してみましょう。
天の川を見るポイントは、街灯りの影響を受けない山や高原、海辺などの人工の灯りがない場所で、空が完全に暗くなる22時頃が最適かもしれません。
(画像提供:国立天文台)
町から少し離れると
都会では、かなかな天の川をみられる場所が少ないと思います。少し車を走らせて郊外に行ってみたり、夏休みを利用して海や山のリゾートに出向くのもおすすめです。夏休みには天体観測などのイベントを開催しているホテルもあります。
左から 休暇村岩手網張温泉(岩手県) 休暇村裏磐梯(福島県) 休暇村嬬恋鹿沢(群馬県) 休暇村南伊豆(静岡県) 休暇村帝釈峡(広島県)
天の川などの天体観測のプログラムのあるホテル
回るまわるよ宇宙は回る
余談ですが、地球は自転しながら太陽の周りを秒速29.8kmで公転しています。太陽系は天の川銀河の中心を秒速230kmで周回し、更に天の川銀河は膨張する宇宙空間を秒速600kmという猛烈な速さで突き進んでいるそうです。なんか、めまいがします。
はじまりやその姿、銀河の衝突、膨張など、まだまだ謎だらけの宇宙ですが、静かに成長してきた天の川銀河にいるおかげで太陽系が生まれ、地球に生命が生まれた奇跡。夜空を見上げて満天の美しい星を見ると、すべてが奇跡的にそろったこの地球に存在していることに「すっご~い!!」と思う七夕ナイトです。