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2024.08.02

住民の半数が移住者!? 和歌山県那智勝浦町色川地区について

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スタッフ名:中村

今回は、休暇村南紀勝浦から車で約40分の所にある、那智勝浦町の色川地区についてご紹介いたします。
色川地区の概要
那智勝浦町北西部の山間部に位置している色川地区は、9つの集落から構成されている山村で、1955年に色川村と勝浦町、那智町、宇久井村が合併して那智勝浦町となりました。
現在の色川地区の人口は約320人で、そのうち新規定住者数が半数を占めている全国的に見ても珍しい地域となっています。主な産業は農業、林業、茶業で、休暇村南紀勝浦の体験プログラムで出している「色川茶」はこの地域の特産品となっています。
色川地区の移住について
 
 
この地区では1970年代から他に先駆けて積極的に移住者の受け入れをしており、当時農村では「よそ者」の受け入れは考えられないことであったため、移住希望から実際に移住に至るまで約2年の月日を費やしたそうです。
 
 
そんな最初の移住者はのちに「耕人舎」となり、有機農業で梅などの栽培と加工を行い安心して食べられる農作物の栽培と加工を取り組んでいきました。そして、その活動に関心を持った人が色川を訪れるようになり、耕人舎はこうした人々を実習生として受け入れていきました。
 
 
こうして移住者の受け入れは始まりましたが、1950年ごろ約3000人いた色川の人口は、1990年には600人を下回るようになり、より強力に地域の活性化を図る必要があるとして、1991年に地域住民で組織された「色川地域振興推進委員会(以下、委員会とする)」が設立され、組織的な新規移住者の受け入れや体験交流活動の促進、地域活性化のための活動の促進支援を行っていきました。
 
 
翌年、委員会の中に体験斑、実習斑、定住促進斑を設置し、「体験→農業実習→移住」へとつながる段階的な体制が作られ、1995年には、旧籠小学校の校舎を改修した、委員会が委託運営している町立「籠ふるさと宿」が開設され、田舎暮らしや農業体験、定住希望者のための宿泊施設として、体験型、実習型、定住型の3つの定住促進プログラムが実施されました。その後も公的資金による体制整備や行政による人的支援によって順調に移住者の受け入れは進んでいき、人口の約半数になるほど移住者の割合が高くなっていきました。


色川に移住する魅力は、利便性とはかけ離れた場所であるからこその豊かな自然や昔ながらの生活が残っている点で、移住者が多くなったことで、新規の移住者が受け入れてもらいやすく、相談などをしやすくなっている点もあるのではないかと思います。


また、先述のとおり移住まで段階的な体制をとっていることも、「移住して何がしたいのか」など、具体的な移住後の生活を想像しやすくなっており、移住に踏み切りやすくなっているのではないかと思います。
実際に色川地区に行ってみました!
那智駅前から県道43号を口色川方面へ進んでいくと、那智山へ向かう県道46号と分かれて少し行ったところで妙法鉱山跡が見えてきます。
妙法鉱山跡
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立ち入り禁止になっていて草木にも覆われているため全貌を見ることはできませんが、航空写真を見るとかなりの規模があったことがわかります。かつて付近にはいくつか鉱山があり、色川の人口が約3000人いたのもこのような鉱山の労働者がいたことも関係しています。
 
 
そこからしばらく山を登っていき、南平野集落を抜けると、小阪集落が見えてきます。
小阪集落
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ここは、棚田が有名な場所となっており、未来に残したい優れた棚田を農林水産大臣が認定する「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~」にも選定されています。
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 小阪の棚田は、時代とともに耕作放棄地が増えて荒廃が進んでいましたが、現在は、2005年に設立された「棚田を守ろう会」によって休耕田を復活させる取り組みが行われており、住民の高齢化や後継者不足を補うために「農業体験イベント」を実施したり、登録制のボランティアである「棚田守り隊」を募集するなど、地域内外からの協力を募って棚田の維持管理が行われています。
 
 
県道は棚田の上の方を通っているので、棚田の景観を見るのであれば、棚田を守ろう会の体験農場へ向かう道を下っていく方が絶景を見ることができます。
この分かれ道を左に曲がり、坂を下りていきます。
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上の写真は、県道から分かれて少し下ったところからの景色です。
ここからでも十分棚田を見ることはできますが、もっと下からの方が小阪の棚田のスケールとその絶景を見ることができます。
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斜面に沿って連なる棚田は絶景で、とても美しい景観が広がっています。
転回や道幅のことを考えて県道に車を停めて歩いてここまで来ましたが、約10分でこの景色が見られる場所に着きました。
見えている棚田全てで田植えが行われているのかというとそうではなく、多くが耕作放棄地となってしまっていますが、かつてはこのすべてで米作りが行われていたと考えると、その規模感に圧倒されてしまいます。
先述した「棚田を守ろう会」では、活動趣旨に賛同し、資金面から支える「賛助会員」の募集も行っているそうなので、美しい棚田の景観を見て、これを後世に残していきたいと感じた方は、「賛助会員」として応援してみてはいかがでしょうか。


小阪集落からさらに進んでいくと、口色川集落が見えてきます。
口色川集落
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こちらにも棚田があり、小阪ほどの規模感ではないもののしっかり手入れされていることが確認できます。


ここは次に紹介する大野集落の次に中心的な集落となっており、地区唯一の診療所はこの口色川にあります。


さらに車を進めると、大野集落が見えてきます。
大野集落
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ここは色川地区の中心的な集落となっており、小中学校や、郵便局、那智勝浦町色川出張所があります。
 
 
この集落を散策して最も印象に残ったのは、子供の数が多いことです。
 
 
周りを山に囲まれた農山村といえば少子高齢化が進み、見かけるのは高齢者ばかりというイメージを持ってしまいますが、この集落では、訪れたのが学校終わりの時間帯というのもあるのかもしれませんが、子供の数が想像以上に多く、都市部かと錯覚するほどの賑わいをみせていました。


そんな明るい子供たちが通う色川小中学校は、2016年に新校舎に建て替えられており、内外装に木材を使った温かみのある校舎となっています。
日本各地で小学校の統廃合が進む中、これほどの農山村地域で老朽化した校舎が新築で建て替えられるというのは、それほどこの地域の未来に希望があるということがわかりますね。
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子供が多いのはやはり若い世代が移住してきているためであり、もしも移住者の受け入れが全くされていなければ、高齢化と人口減少が止まらず学校もなくなり、学校がなくなれば若い世代の流入もよりなくなるという悪循環が続き、あとは集落が消滅するのをただ待つのみという悲しい結末もあったかもしれません。
 
 
大野集落をあとにし、車を進めると田垣内集落が見えてきます。
この集落の西側には先述した「籠ふるさと宿」があり、理想の空き家や農地を見つけるまでの仮定住先としての利用もできる施設となっています。
籠ふるさと宿
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ちなみに、この場所は休暇村南紀勝浦から30キロほどの距離ですが、車で50分近くかかっています。
途中道路の拡幅がされて走りやすい箇所があるとはいえ、すれ違いが困難な狭い区間もまだまだ残っており、ひたすら山道を走り続けるためにどうしても時間がかかってしまいます。
 
 
この先古座川町方面にもまだ集落はありますが、ここで口色川へと折り返します。
 
「色川よろず屋/らくだ舎 喫茶室」
大野集落と口色川集落の間には、「色川よろず屋」という地域に欠かせない「商店」があり、食品や日用品、嗜好品などが売られています。学校終わりの子供が駄菓子を買いにくる場面もあり、常に賑わいを見せていました。
また、よろず屋に併設して「らくだ舎 喫茶室」があり、ブレンドコーヒーや色川産の紅茶やほうじ茶、フレンチトーストやサンドイッチなどのメニューもあります。さらに店の奥は本屋になっており、新刊を中心に様々な本が取り扱われています。
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カフェでゆったりとしたひと時を…
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私はサンドイッチをいただきました!
色川産の食材が使われており、とても美味しかったです!!
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店内はとても落ち着いた雰囲気があり、店の奥には本屋に併設されて図書室があるため、コーヒーやお茶を飲みながらゆっくりと読書することも可能となっています。
また、らくだ舎を運営しているご夫婦も移住者であるため、移住に関するお話や色川に関するお話などを伺うこともできます。
とても優しい方で、店の雰囲気も相まって何度も訪れたい気分になりました。
 
 
土曜限定で鹿肉ハヤシライスもあるそうなので、次はそれを頼んでみようと思います。
 
 
らくだ舎は、木・金・土曜の10時から17時30分まで、よろず屋はらくだ舎の営業日+火・水曜の15時から17時30分までとなっているので、気になった方はぜひ行ってみてください!


口色川まで戻ってくると、下里へ抜ける県道45号との分岐があるので、今度はここから山を下りていきます。
 
 
県道43号と分かれてしばらく行くと、色川神社が見えてきます。ここには色川発祥の地と書かれた石碑があり、色川に関する歴史が書かれた看板も設置されています。
色川神社
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熊野黒潮本舗
さらに下っていくと、熊瀬川集落の地域に入り、「熊野黒潮本舗」が見えてきます。
熊野黒潮本舗は塩の生産を行っており、熊野の山々の中で熊野灘から汲み上げてきた海水を大きな釜に入れて薪で焚いて、煮詰めてできた塩の結晶を天気の良い日に天日干しにして作っています。この場所で直接販売しているわけではないですが、「黒塩、梅塩、ゆず塩、炭塩、ハーブのお塩、男の荒潮、抹茶塩」などの商品が取り扱われています。
 
 
塩を海の近くではなく山奥で作る理由は、空気の澄んだ自然の中で薪を使用して焚くことで、環境に気を遣って作業ができるためで、大量生産ではない手作りの高級塩を生産・販売しています。
 
 
休暇村南紀勝浦でも、夕食の天ぷらコーナーで熊野黒潮本舗の「黒塩」、「梅塩」、「炭塩」を取り扱っているので、ご宿泊の際はぜひ天ぷらと一緒にお召し上がりください。
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色川茶
そこからさらに下っていくと次は色川茶の茶畑が見えてきました。
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色川茶の栽培から販売をしている両谷園は、農薬を一切使わずに育てた色川産の茶葉だけを使用して製茶をしており、1981年に「安心して飲めるお茶をつくりたい」という想いからお茶工場を創設したことに始まっています。
 
 
色川茶は、温暖多湿の気候を活かして良質な茶葉が生産されており、本州一の早摘み茶としても知られています。
また、他のお茶の生産地とは違い、まとまった場所で大量生産しているのではなく、小さな茶畑が各地に点在していることが特徴で、色川地域の様々な場所で茶畑を見ることができます。
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こちらは当館の体験プログラムでもお出ししており、好評をいただいています。
また、「色川茶」と「熊野黒潮本舗のお塩」は当館の売店でも取り扱っているので、気になった方はお買い求めください。
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そこから太田川に沿って車を走らせること約20分で、那智勝浦新宮道路の市屋インターに繋がります。
これにて色川の散策は終了となります。
まとめ
今回は、那智勝浦町の色川地区のご紹介をいたしましたが、いかがだったでしょうか。
世界遺産、マグロ、温泉などが有名な町の、あまり目を向けられない山奥の農山村地域ではありますが、移住者が半数を占めているという特徴を持ち、とても魅力の詰まった地域となっているので、皆様にも興味を持っていただけたらなと思っております。
「観光地」というわけではなく、町の中心部からも離れた地域になっているので、なかなか行く機会もないかもしれませんが、小阪の棚田はぜひ一度見ていただきたい絶景なので、棚田を見て、その後「らくだ舎」でコーヒーを飲みながらゆったりとしたひと時を過ごし、そのまま「よろず屋」で色川の名産品を買って帰るといった流れで足を運んでみてはいかがでしょうか。

色川の移住に関するホームページ

耕人舎 ホームページ

小阪の棚田に関するホームページ

らくだ舎 ホームページ

熊野黒潮本舗 ホームページ

両谷園 ホームページ

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