飯田線は豊橋駅(愛知県)と辰野(たつの)駅(長野県)を結ぶ全長195.7kmのJR東海の路線です。
全通したのは昭和12年と古く、当時は4社の私鉄が各区間を運行していたものを昭和18年に統合・国有化されて国鉄飯田線となり、さらに昭和62年の国鉄分割・民営化を経て現在の形となりました。1つの線路で結ばれているとはいえ、旧私鉄時代の開業目的や地形の違いなどから、線区ごとに全く異なった側面を持っているのもこの線の特徴です。
このようなことから、この線を通して乗る人は皆無と思われるのですが、大変興味深いことに全線を完走する、しかも普通列車が1日3往復存在するのです。
いつかは乗ってみたいと漠然と思っていたのですが、先日、ついにその機会がやって来ましたので紹介したいと思います。
私が選んだのは豊橋を10時42分に発車する岡谷(おかや/長野県)行きの普通列車(519M)で、終点岡谷到着は17時33分、所要時間は何と6時間51分(!)となっています。なお、飯田線の終点は先述のとおり辰野駅なのですが、この列車は2つ先の岡谷駅まで行きます。ちなみに、新幹線では東京から鹿児島中央まで(1463.8km)でも6時間半程度で行けてしまうので、何とも「贅沢」な時間の使い方です。
YAHOO!の路線検索での結果がこちら。乗り換えなしで完走することがわかります。ちなみに途中駅数は「93駅」(!)と表示されています。
「93駅」を開いてみるとこの通り。5ページにわたって表示されます(笑)。
ターミナルの端っこからひっそりと出発
豊橋駅の飯田線の発車ホームはおもに1・2番線。他のホームとは異なり行き止まりになっているせいもあってとてもひっそりとしています。名鉄(名古屋鉄道)の電車が頻繁に発着する隣の3番線とは対照的です。同じホームに違う会社の電車が行き来するのは全国的にも珍しいのではないでしょうか。
なお、豊橋駅は休暇村伊良湖(いらご)への入り口となる駅です。飯田線ご旅行と併せてご利用されてみてはいかがでしょうか。
休暇村伊良湖のホームページはこちら
さて、豊橋駅4番線には10時08分発の飯田線の特急「伊那路」が止まっています。これに乗れば途中の飯田まで快適に移動ができ、かつ数時間早く帰ることができるのですが、今回は敢えて見送ることにします。
そうこうしているうちに、10時34分、待望の列車が2両編成で2番線に入ってきました。折り返しの運転ではなく車庫からわざわざ回送でやってくるところに長距離列車としての貫禄(?)を感じます。
飯田線は列車の運転区間や線区の特徴などからおよそ3つの区間に大別できますので、これからはそれぞれの区間ごとに区切って紹介していきます。
豊橋~本長篠間
さて、列車は10時42分、岡谷に向けて定刻に出発しました。私の車両には10名ほどの乗客が乗っています。秋の行楽期も終わりつつある土曜日なので空いているのでしょうか。
出発してすぐの2駅は通過しますが、最初の停止駅、小坂井からは終点まで94駅の全てに律儀に停車していきます。なお、小坂井駅の手前辺りまでは名鉄と共用の線路を走りますが、これも珍しい存在なのだそうです。
東三河地区にあたるこの区間は沿線人口も多い区間です。列車本数も多く、乗降客も比較的多い印象でした。無人駅が多いのか、車掌さんがきっぷの販売・回収、そしてドアの開閉に忙しそうでした。
ここでランチタイム♪
豊橋駅といえば稲荷寿しのイメージ(豊川稲荷との関係??)が強いのですが、今回はかんぴょう巻きとセットになった「助六寿司」(580円)を購入。駅弁を製造している壺屋さんは明治創業の老舗で、100年以上も前から豊橋駅で駅弁を販売しているそう。甘辛く味付けされたお揚げと寿し飯との味のバランスが絶妙で、私の苦手な胡麻が入っていないのもGood。特に今回のような普通列車にはテーブルなどが付いていないため比較的手軽に食べられるお寿司は重宝します(割り箸も付いています)。
車窓から長篠城駅の駅舎、お城風なのがかわいいですね♪
座席はこのように4人掛けですが、昔の「直角椅子」とは異なりバケットタイプのシートなので、姿勢よく座れば(←ここ重要)長時間でも苦になりません。
ちなみに車内には洋式のトイレも付いているので安心です。
11時42分、本長篠駅に着きました。停車時間が17分もあるので列車から降りて散策してみました。
長時間の停車は対向する特急との行き違いのためだったようです。
本長篠~天竜峡間
特急との行き違いも終えて列車は11時59分、本長篠駅を定刻に出発しました。この区間は主に天竜川に沿って走り、「秘境」とも呼ばれる駅も複数存在する区間です。また、愛知・静岡・長野の県にまたがるため、列車本数や人の往来も少ない区間です。
列車は「秘境」へと向かってひた走ります。湯谷温泉駅を過ぎると進行方向右側にこの線屈指の景勝地、鳳来峡(ほうらいきょう)が見えるのですが、操作の不慣れで写真を取り損なってしまいました(涙)。
12時31分、愛知県最後となる東栄(とうえい)駅に到着しました。ここから先は静岡県を進みます。なお、この東栄駅は休暇村茶臼山高原への入り口となる駅で送迎バスも出ています。
休暇村茶臼山高原の情報はコチラ
昼下がりのとある駅に停車中。飯田線にはこのように道路から直接ホームに入れる駅が多くあります。左の建物は待合室なので、トタン屋根だけの構造物が「駅舎」になるのでしょうか?? 電話ボックスが懐かしいです。(向市場(むかいちば)駅)
「秘境」駅での行き違い列車の待ち合わせ、単線区間ならではの光景です。「この先も気を付けて!」と言葉を交わしているかのようです。(伊那小沢駅)
静岡県最後の駅となる小和田駅に停車。この駅も秘境ムード満点です。読み方は異なりますが、皇后雅子様ご結婚の際にはこの駅の入場券が飛ぶように売れたとか…。「恋成就駅」のポールもその時のものでしょう。
静岡・長野県境から天竜峡駅までの区間は天竜川左岸を遡上し、このように秘境ムードあふれる車窓が楽しめます。下り列車の場合は進行方向左側の席に移動しましょう。
街並みが見え、左側に見えていた天竜川を渡ると列車は天竜峡駅に到着します。この線のおおよそ中間に位置するこの駅を境に沿線の様子も大きく変わります。向かいのホームにはこの駅止まりの列車が休んでいました。
天竜峡~辰野間
ここから先は車窓の風景も大きく変わり、沿線の民家も増えてきます。旧私鉄の名残か、駅間も短くなり、短い駅間を一つひとつ律儀に停車していきます。天竜峡を出て30分ほど走るとこの線の主要駅の一つで線名にもなっている飯田に到着しました。赤い屋根の駅舎が印象的です。
リニアはこの辺りをトンネルで抜けるのでしょうか。
列車は晩秋の伊那谷の各駅に止まりながら終点の岡谷を目指します。車窓右手には赤石山脈、左手には木曽山脈の山々が見えます。三河、駿河、伊那と3つの国を座りながらにして移動してきました。
15時15分、伊那大島駅に到着、列車はここで8分間停車します。ずっと座っているのでこのような停車時間はありがたいです。停車中にホームを散歩。ホームからは雪をかぶった山々を遠望できました。
伊那大島駅出発前の車内の様子。この車両には私のほか乗客は1人だけとなってしまいました。ちなみに車掌さんにこの線を通して乗る人がいるのか聞いたところ、「1~2名はいらっしゃる」とのことでした。
16時13分、列車は駒ケ根(こまがね)駅に到着しました。辺りもすっかり暗くなったので、風景写真はこれが最後となります。
日もすっかり暮れ、列車は定刻に飯田線の終点となる辰野駅に到着、そのまま中央本線に乗り入れ定刻の17時33分に終点岡谷駅に着きました。豊橋から205.2kmの道のりを6時間51分かけて運んでくれたこの列車に感謝です!
こうして念願の飯田線全区間直通列車での走破が実現したのですが、「秘境」とも呼ばれる区間を走行するだけに荒天による運休や災害による不通区間の発生などが過去にもしばしば発生し、その期間が1年以上に亘ったケースもあります。今年令和3年についても橋梁の破損等により約3か月の間の区間運休となり11月15日に全通したばかりでした。このように完全走破にはハードルの高い路線でしたが、その達成感もひとしおでした。また機会があれば次回は上り方向の列車で今回と反対側の車窓も楽しんでみようと思います。
(今回の訪問日 令和3年12月4日)
【ご注意】
今回紹介した時間帯の列車をご利用の場合は、時間的に前後に休暇村富士にてご宿泊いただくのは困難です。途中泊されるか、或いは他の時間帯の列車をご利用ください。また、このブログに記載の時刻や運行等の情報は全て訪問日時点でのものです。ご旅行の際には時刻表やホームページ等で最新の情報をご確認ください。
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休暇村富士からのアクセス情報
・豊橋駅まで
富士宮駅~(身延線・東海道線特急約45分)~静岡~(新幹線約45分)~豊橋駅
・岡谷駅まで
富士宮駅~(身延線特急約90分)~甲府~(中央線特急約60分)~岡谷駅
※休暇村から富士宮駅まではバス約45分
※上記時間は乗り換え時間を含まず
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