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2024.05.18

クマの住む森でも安全に歩く! ~トレッキングの参考に!

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スタッフ名:高梨(ネイチャーガイド)

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 5月中旬になり山菜のシーズンとなりました。
 今の時期、ツキノワグマの食物は山菜がメインなので同時にクマ出没のシーズンともなります。
 
 トレッキングコースの入口には、「クマ出没注意!」の看板がクマの数よりずっと多く立っていますが、地元自治体の責任上のことです。ビビってしまってトレッキングをやめようか?!と考える方もいらっしゃいますが、ここでよく考え、この問題のよりよい対策を考えてみましょう。
 

  •  
  • 1,クマという生き物・何を食べている?

     成体のクマの体格は、ほぼ成人男性と同じで体重50~120㎏、メスはややこれより小柄です。クマが人と出会った場合、目線はクマより高くもあり、まず警戒して「トラブルは避けよう」と考えます。つまり、いきなり襲ってくることまずありません。

     当然ながら野生動物は、衣・食・住のすべてを自らの力でまかないます。特に「食」が重要ですが人間のようにスーパーやコンビニを利用しません。つまり、いつ、どこに行けば、どんな食べ物があるか、を知らないと生きていけません。
     食べ物と言ってもほとんどは植物です。植物の方が確実です。よってクマの奥歯は人間と同じ臼のような形で植物質をすりつぶせるようにできています。『人間を襲って食べるのでは??』といった心配は無用です。

     春は山菜類(大食漢なので大型のアザミ、ハナウドなどの茎)が主体ですが、地竹(ネマガリダケ)もことのほか好きです。初夏~夏になると漿果類(オオヤマザクラのサクランボやクワの実など)や昆虫類、秋は堅果類(ドングリやブナの実など)と、季節によりほぼ決まっているので、クマが出没する時期と場所はだいたい決まっています。

     
      オオヤマザクラのサクランボ
      サクランボの種のあるクマの糞
      アザミの茎の食痕
      クマの糞から取り出されたアザミの茎主体の固形物
      • 2、クマから見た人間とは?!

         クマは人間をどう見ているのでしょうか。
         まずほぼ同じ体格で何やら不可解なものを持ったり身に付けたりで、漠然と不安を感じているはずです。そして何より裏磐梯の平地では人の数が多く怖さを感じていることでしょう。
         それなのに至近距離でばったり出会うとすぐ逃げる意気地なし!と思っているでしょう。
         何より同じ生き物として、相手が何をしようとしているのか知る意識が見えず、怖がるばかりです。


         
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      • 3、クマとの距離 ~ レッドゾーン、イエローゾーンがある
         
       こうした人間と熊が遭遇した場合、何が起きるでしょうか。まず両者の距離により異なりま  す。数m以内の至近距離の場合、クマは、もう接触は避けられないと先制攻撃をすることが多いです。こうなった場合はクマよけスプレー、または黒いジャンプ傘をクマの目前で開くなどで降参させるしかありません。レッドゾーンでの対応です。

       それより遠い場合、イエローゾーンでは、クマは人を威嚇や警戒はするでしょうが襲ってくることはまずありません。こんな時は、クマの警戒心を弱める行動をすることです。但し背中を向けて逃げてはいけません。一気に闘争本能をあおり追いかけられます。目線は外さず少しずつ距離をとりましょう。

       このほかに、実はグリーンゾーンというのもあります。クマの鼻と耳は、犬以上に鋭敏で人間が気づく前にクマの方が気づき、そっと距離をとり接触を避けます。そうしないとトラブルに遭遇ばかりで体や精神が持たないのでしょう。そうした意味で、トレッキング時にはクマ鈴等を持ち、早めに人間の存在を報せることは有効です。


       
      クマの爪
      人間の爪にも似るが、より内巻きで先端が細くなる
      4、特に注意の必要なケース

      ➀ 親子連れ
       中型犬以下の体格のクマは子熊で、見えなくても近くに母熊がいます。うっかり母熊より人間が子熊に近づいたり、母クマの視線から子熊と人間が重なったりすると母性本能で猛然と人間に向かってきます。早めに存在をキャッチし、早めに離れるようにしましょう。

      ② 天候不良の時
       鋭敏なクマの鼻や耳が利かない場合があります。風の強いとき、雨のときなどは、いきなりレッドゾーンで遭遇ということもあります。滝や渓流の瀬音などでも同様です。視界不良の場所を通るときも同様な注意が必要です。

      ③ その他特別な場所
       クマが離れたくない場所というのがあります。食料の特に多い場所、休憩の場と定めた場所(まだ暗いときの一夜のねぐらと定めた場所も同様)、冬眠場所などに人間が近づいた時、クマは警戒しつつ人が遠ざかるのを期待しますが、いよいよ近づいてレッドゾーン内となると、突如出てきたりします。トレッキングの場のシチュエーションをよく考えて臨みましょう。
       



      <まとめ> 裏磐梯トレッキング・エリア内のクマ
         そもそも、磐梯山の噴火でできた休暇村周辺のトレッキングエリアは、岩なだれで覆われた大地であり、今もほとんど耕作地がありません。畑に居ついたり民家近くで生活したりする人慣れした性悪な新世代グマはほとんどいません。
         野生動物本来の用心深い、慎重な行動をとるクマが多いのです。クマの住む森のトレッキングは、一種の緊張感も伴いますが、それもまた本来の自然の中らしい魅力でしょう。
         
         クマの住む森に来たら、クマに限らず他の動物の気配も察知しつつ、多くの植物や動物が共生する大地を五感で感じトレッキングを楽しんでください。裏磐梯の自然のすばらしさを一層実感することでしょう。


        (↓ クマの毛皮 つややかで分厚く、クマのタフネスさの象徴です)
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