新しい自然愛好のカタチ ~ 「ジオパーク」へのお誘い
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スタッフ名:高梨光一
ジオパークって、もう皆さんご存じですか?
ジオ(geo)とは大地・地球を意味する語で、ジオパークとは簡単には「大地の公園」ということです。
民族や人の一生と同様、あるいはそれ以上に「大地」にも壮大なドラマがあり、その上で暮らすわれわれは大地の影響を強く受けて生きています。そのことを意識してジオサイト(大地の遺産)に関わり、その保全・教育・ツーリズムに生かそう、というのがジオパークのコンセプトで、日本では2008年より始まりました。
地球科学(地学)の知見をもとに、その地域の大地にふれあうことで始まる、知的で新しい自然の楽しみ方で、2015年にはユネスコの正式事業に認定されています。
また大地は、われわれに多くの恵みを与えてくれるので、それを積極的に享受することもジオパークの主要な活動で、具体的には観光、自然体験、地域グルメ、温泉なども含まれます。
2022年現在、日本ジオパークには46地域が、うち9つは世界ジオパークにも認定されています。磐梯山ジオパークは2011年という早い段階で日本ジオパークに認定され活動が進められています。
そんなわけで、今回は磐梯山ジオパークの例でお話ししましょう。
ここには73もの多くのジオサイトがありますが、そのなかから「見祢の大石(みねのおおいし)」と、そこのジオグルメ(名物メニュー)「見祢の大石どどどど丼」を紹介いたします。
「見祢の大石」は、明治の磐梯山噴火の際に、山の上の方からやってきた巨岩で、幅9m、奥行き6m、高さ3mほどで重さは約300トンもあります。この巨岩を含む火山災害で見祢地区では14人の人が亡くなっています。
(↑ 磐梯山と見祢地区の位置関係。火山麓扇状地の上にある。2月27日撮影)
(↓ 磐梯山と見祢の大石)
この大石に近づいてよく見ると、様々な形や大きさの石が、たくさんくっついて一つの大きな岩石を構成しているのが分かります。(↑ 上の写真)
このようなつくりの岩石は「集塊岩」と呼ばれていましたが、現在は、地質学者は「火山角礫岩」とか「凝灰角礫岩」、火山学者は「溶結火砕岩」と呼ぶことが多いです。(火成岩の基本分類では「安山岩」、「安山岩質の溶結火砕岩」などと用います。)
ここでは、後者を取ることにします。「ようけつ・かさいがん」とは、字のごとく「火(マグマ)が砕け散って溶けてくっついた岩石のことです。
こうした岩石は、次の写真で見るように、噴火口のごく近くでないとできないものです。それが、山頂付近から約6㎞も離れた見祢地区に鎮座しているのです。
火山泥流に乗って運ばれてきたことを暗示しています。
(↓ イタリア・エトナ火山の例。丸印のようなところに溶結火砕岩ができる。)
現在見祢地区は復興し、この大石は民家の庭石として利用されていますが、火山噴火のエネルギーの凄まじさを示すものとして国の天然記念物にも指定されています。その説明版には、行方不明者を捜索する当時の人々の様子が写真で掲載されています。(↑ 上の写真)
「溶結火砕岩」の「見祢の大石」はこのくらいにして、次は「見祢の大石どどどど丼」です
これは、天然記念物からわずか30mのところにある見祢地区住民が運営している農家レストラン「結(ゆい)」のジオパ-ク特別メニュー、特大かき揚げ丼です。材料は、見祢地区の清浄野菜5品目でできています。
特大かき揚げの表面は、様々な形や大きさの野菜がたくさんくっついて一つの大きな「溶結野菜岩」のようになっています!!見事ですね。
野菜だけのかき揚げですが、磐梯山の火山麓扇状地に育ったまさに地場野菜の新鮮さとおいしさは格別! 直径12㎝厚さが10㎝もあり、あごをはずさずに食べてください!
(↓ 見祢地区の田畑のよさは白鳥たちが証明しています。いい土地の、コシヒカリなどの美味しい農産物のところでのみ、白鳥たちは落穂ひろいをするのです。(3月13日撮影))
実食では、やや甘めのたれに適度に浸され乗っていて食べやすかったです。地場野菜の甘さがとても印象的でした。副菜の地鶏スープ、大根漬、いか人参も堂々たるもので、さすが人気農家レストランと感じました。
またこのレストランでは「いなわしろ天の香」という地粉を使った蕎麦も名物です。特に会津地鶏スープの温かい蕎麦は絶品です。
農家レストラン「結」の人々が作って皆さんに提供するメニューに込めた思いがわかりましたね?!
(↓ 農家レストラン「結」と磐梯山。中はかなり広いです。)
さて皆さん、ジオパークの楽しみ方ってどんなものかだいたい分かりましたか!?
私たちは、大地の存在、大地の恵みがあって始めて生きているのです。
磐梯山のふもとで是非それを実感してください。
( 猪苗代町から裏磐梯に向かう途中で少しだけわき道に入ると到着します。)