ヤマブドウの蔓がこんな素敵なバッグに! ~編み組細工の魅力
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スタッフ名:高梨
6~7月のほんの10日間ほど、ヤマブドウの蔓に厚さ2㎜程のしなやかで強靭な繊維の木質が形成されます。会津の山人たちはこれを採取しておき、冬季間にこれを素材にバッグや籠などの生活用品を作ります。使用部位や制作方法は異なりますがアケビ蔓やマタタビ蔓、ヒロロ(ミヤマカンスゲ)、竹などでも同様に作ります。これらを総称し「編み組(あみくみ)細工」と呼ばれ、経済産業省の伝統的工芸品にも指定され人気が定着しております。
ヤマブドウ蔓の採取時期となった最近、休暇村の森で細工に使用する蔓の部位を確認し、かつ裏磐梯にお住いの、編み組細工の達人宅を訪ねてその作品づくりのお話を聞いてきました。今回ご紹介いたします。
まずヤマブドウ蔓のことですが、次の写真は、木に絡みついている太さ2~3㎝の蔓数本です。
外見は、こげ茶色の皮がガサガサ・ボロボロですが、これらを使うのではありません。その外皮を剥ぐと、カフェ・オーレ色の内皮が出てきて、ナイフで切ると厚さ2㎜位にきれいに剥け、これを利用するのです。
とてもしなやかで加工しやすく、かつ強靭です。幅1㎝の蔓の皮1枚で、私の望遠鏡のバランスウェイト4.6㎏を優に支え、切れませんでした。
細工作業には、まとめて乾燥保存しておいたのを水で戻すと元のようにしなやかになり、これを使用します。これらの写真は、今回お世話になった裏磐梯の名人、ペンション・ドナルドの羽染さん宅でのものです。
次が、羽染さんが制作されたヤマブドウ細工の完成品のバッグです。
左が最も一般的で縄文遺跡の出土品にもみられる「網代編み」の作品、右は最も高級な「花編み」の作品です。
名人の花編み作品は、今日、ヨーロッパの一流ブランドバッグの高級品に劣らない評価を得ています。事実、使い込まれる程、一層色合いに深みが出て見事な工芸品となります。
次は、作品を前にした羽染さんです。国立公園内の裏磐梯に住んでおられる羽染さんは、素材のヤマブドウの蔓の調達に特に神経を払われ、規制外の私有地のものを地主の了解で利用しているそうです。そうしないと国立公園内が荒れてしまうからです。
次は、バッグを手にしてご満悦の休暇村の玲奈チャン。とてもエレガントですね!
次は、会津の三島町産のヒロロ細工のバッグ。美智子上皇后さまが以前買い求められたことで有名になりました。
次は、三島町で毎年6月の第二土・日曜に開催されていた「ふるさと会津工人祭り」の一コマです。ヤマブドウ・アケビ・ヒロロ・マタタビ細工だけでなく、竹、籐、カバノキ、桜材などあらゆる編み組細工やその他の工芸品の直売ブースが日本全国からだけでなくアジア各地から集まって森の中に展開され、毎年、参加2万人規模の大変な賑わいとなります。
残念ながらコロナ禍の影響でここ2年は開催されていません。再開を強く期待します。
編み組細工は縄文の昔から行われていたようで、植物の素材の特性、採取の方法、制作方法等が生活の知恵・文化として継承されてきているわけです。昔の人の知恵の偉大さ、奥深さに感嘆せずにはいられません。
人類は確かにホモ・サピエンス(「賢い人」の意)だったことを思い起こします。
それらの一端は、福島県大沼郡の三島町生活工芸館(電話0241-48-5502 月曜休館)に常時展示されております。
裏磐梯では、「裏磐梯物産館」、「道の駅うらばんだい」に少しですが展示があります。よろしかったらご覧になり、編み組細工の素晴らしさを直に感じてください。